ふくほのひとりごと。

高専生が勉強したことの自分用メモ。

電気回路 / 三相交流入門してみた(1)電力の手前まで

ふくほです。
唐突に三相交流回路について勉強する気になったので, そこでわかったことについてまとめてみます。

1 三相交流とは

同じ周波数で位相だけをずらした電源を複数組み合わせる方式を, 単相方式に対して多相方式と呼びます。三相交流は多相方式の一種で, \dfrac{2}{3}\pi[rad]ずつ位相をずらした交流電源を組み合わせています。
三相交流を用いることで, 単相と比べて送電線での電力損失を少なくできるうえ安定した電力を供給することができます。さらに簡単に生み出すことができるため, 三相交流発電所の発電機に用いられています。

また最大値がE_m, 各周波数\omega[rad/s]の三相交流において, 3つの電源をe_a, e_b, e_cとすると, それぞれは\dfrac{2}{3}\pi[rad]の位相のずれがあるため
e_a = E_m\sin{\omega t}
e_b = E_m\sin{(\omega t -\dfrac{2}{3}\pi)}
e_c = E_m\sin{(\omega t -\dfrac{4}{3}\pi)}
と表すことができます。

2 三相交流における電源とY-Δ変換

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三相交流回路における電源の接続の方法として, Δ形起電力(上図右)とY形起電力(上図左)があります。Yはスターと読んだりもします。Y結線で, 図のNの部分は電位が0の点で中性点と呼ばれます。
上図で,
E_a = E_m\sin{\omega t}
E_b = E_m\sin{(\omega t -\dfrac{2}{3}\pi)}
E_c = E_m\sin{(\omega t -\dfrac{4}{3}\pi)}
としたとき, 電源をY-Δ変換をすることを考えます。
まずa-c間の電位差はY結線の場合ではE_a-E_c,Δ結線の場合ではE_{ca}と表されます。つまり, E_{ca}=E_a-E_cが成立します。これはベクトルの減算になります。E_{ab}, E_{bc}の場合も同様にすると, 次の図のようなベクトル図が書けます。E_{ab},E_{bc},E_{ca}はベクトルの減算をした後真ん中の点に平行移動しています。
f:id:fukuro_hoho:20210215213222p:plain
ここで, E_{ab},E_{bc},E_{ca}の大きさは\sqrt{3}E_mとなります。下の図をご覧ください。(私は受けたことがないのでよくわかりませんが, 電験なんかではこれが頻出だそうです。)
f:id:fukuro_hoho:20210215213234p:plain
また位相はそれぞれ\dfrac{1}{6}\pi,\dfrac{5}{6}\pi, \dfrac{3}{2}\piとなります。以上をまとめると
E_{ab} = \sqrt{3}E_m\sin{(\omega t-\dfrac{1}{6}\pi)}
E_{bc} = \sqrt{3}E_m\sin{(\omega t -\dfrac{5}{6}\pi)}
E_{ca} = \sqrt{3}E_m\sin{(\omega t -\dfrac{3}{2}\pi)}
がわかります。
Δ-Y変換の際も, ベクトル図を用いて今回の逆を行えば同じように解くことができます。また電流のY-Δ変換にも同じことができます。負荷のY-Δ変換については割愛します。

3 Δ結線とY結線

先程紹介したΔ形起電力とY形起電力はそれぞれΔ形、Y形にに接続された3つの負荷を用いてΔ結線, Y結線を構成します。その回路図を以下に示します。
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Y結線について少し詳しく書いておきます。
先程示したY結線の図において, 各負荷に流れる電流をそれぞれI_a, I_b, I_cと置きます。すべての電流はN'へ流れ入る方向であるとします。このときのI_a, I_b,I_cを, キルヒホッフの法則を使って求めてみましょう。
KVLより, 以下の3つの閉路方程式が立てられます。
E_a-E_b=Z_aI_a-Z_bI_b\tag{1}
E_b-E_c=Z_bI_b-Z_cI_c\tag{2}
E_c-E_a=Z_cI_c-Z_aI_a\tag{3}
またKCLより
I_a+I_b+I_c=0\tag{4}
が成立するので, (1)(2)(4)から成る三元一次連立方程式を解くと(1,2,3だと線形従属なので解が不定になります)クラメルの公式から

\begin{eqnarray}
I_a&=&
\dfrac{
\left|
\begin{array}{ccc}
E_a-E_b &-Z_b &0\\
E_b-E_c &Z_b&-Z_c\\
0 &1&1
\end{array}
\right|
}{
\left|
\begin{array}{ccc}
Z_a &-Z_b &0\\
0 &Z_b&-Z_c\\
1 &1&1
\end{array}
\right|
}
=
\dfrac{
\left|
\begin{array}{ccc}
E_a-E_b &-Z_b &0\\
E_b-E_c &Z_b+Z_c&0\\
0 &1&1
\end{array}
\right|
}{
\left|
\begin{array}{ccc}
0 &-Z_b-Z_a &-Z_a\\
0 &Z_b&-Z_c\\
1 &1&1
\end{array}
\right|
}\\
&=&\dfrac{
(E_a-E_b)(Z_b+Z_c)+Z_b(E_b-E_c)
}{
Z_aZ_b+Z_c(Z_a+Z_b)
}\\
&=&\dfrac{E_a(Z_b+Z_c)-E_bZ_c-E_cZ_b}{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}
\end{eqnarray}
がわかります。ここでY_a=1/Z_a,Y_b=1/Z_b,Y_c=1/Z_cとして, 分母分子を Z_aZ_bZ_cで割ってみると

\begin{eqnarray}
I_a
&=&\dfrac{E_a\dfrac{Z_b+Z_c}{ Z_aZ_bZ_c}-E_b\dfrac{Z_c}{ Z_aZ_bZ_c}-E_c\dfrac{Z_b}{ Z_aZ_bZ_c}}{\dfrac{Z_aZ_b+Z_bZ_c+Z_cZ_a}{ Z_aZ_bZ_c}}\\
&=&\dfrac{E_a(Y_b+Y_c)-E_bY_b-E_cY_c}{Y_a+Y_b+Y_c}Y_a
\end{eqnarray}
となり, 簡潔に表すことができました。
I_b,I_cも同様にすると
 I_b=\dfrac{E_b(Y_c+Y_a)-E_cY_c-E_aY_a}{Y_a+Y_b+Y_c}Y_b
 I_c=\dfrac{E_c(Y_a+Y_b)-E_aY_a-E_bY_b}{Y_a+Y_b+Y_c}Y_c
を導くことができました。ただしこれは線路のインピーダンスは考慮していません。

次に, N'での電位V_Nについて考えます。
V_N=E_a-Z_aI_a=E_b-Z_bI_b=E_cZ_cI_cとなるため(自明なので詳細は割愛), さっきの式を代入すると

\begin{eqnarray}
V_N
&=&E_a-Z_aI_a\\
&=&E_a-Z_a\cdot\dfrac{E_a(Y_b+Y_c)-E_bY_b-E_cY_c}{Y_a+Y_b+Y_c}Y_a\\
&=&E_a-\dfrac{E_a(Y_b+Y_c)-E_bY_b-E_cY_c}{Y_a+Y_b+Y_c}\\
&=&\dfrac{E_aY_a+E_bY_b+E_bY_c}{Y_a+Y_b+Y_c}
\end{eqnarray}
Y_a=Y_b=Y_cのとき, E_a+E_b+E_c=0よりV_N=0となることがこの式から読み取ることができます。つまり, 3つの負荷のインピーダンスがすべて同じな場合は, N-N'は同電位(GND)であるので導線で接続しても回路には何も影響がないんですね。この線は中性線と呼ばれ, 回路計算で重要な役割を果たします。(中性線で区切って回路を分離することができます。)